日々レッスンをしていて、僕が大切にしていることの一つに「自分で楽譜を読む力」があります。
ただ、すべての生徒さんが最初から自分の力だけで楽譜を読めるわけではありません。
正確には「自分で読めるようになること」、そしてその前の段階として、
まずは自分で楽譜を読んでみよう、考えてみようとする意識を持つことを大切にしています。
ここでいう「楽譜を読む」というのは、音符やリズムを正しく読むことだけではありません。
なぜここにこの強弱が書かれているのか。
このフレーズはどこへ向かっているのか。
同じような部分がもう一度出てきたとき、最初とは何が違うのか。
作曲家はなぜ、この音を重ねて書いたのか。
楽譜をよく見ていくと、演奏を考えるための材料がたくさん書かれています。
もちろん、小さな生徒や習い始めたばかりの生徒には、最初からそこまで意識するのは難しいです。
初めは一緒に楽譜を読みます。
音やリズムはもちろん、指使いを考えたり、フレーズを探したり、和声について話したり。時には楽譜から少し離れて、作曲家や作品が書かれた時代、あるいは現代の物事に置き換えることもあります。
ただ、いつも僕がこう弾くと一つの答えを決め、生徒がそれをそのまま再現するばかりのレッスンにはしたくないと思っています。
「先生、ここはどう弾けばいい?」
と聞かれたとき、
「どんなイメージ?」
と、逆に聞き返すこともよくあります。
すぐに一つの答えを伝えた方が早いこともあります。それでも、自分で楽譜を見て、自分なりに考える時間をできるだけ大切にしたいと思っています。そして、その答えは僕と違っていても構いません。
むしろ、なぜそう考えたのかを聞いてみたい。
楽譜のここを見て、こう考えた。
実際に弾いてみたら、こちらの方が自然に感じた。
自分には、この音がこう聞こえた。
そういうものがあれば、僕の考えていた方向性に無理に寄せるよりも、その生徒さんが感じた方向性を生かして音楽をまとめた方が、素直で自然な演奏になることもあります。
もちろん、楽譜からあまりにも離れていれば一緒に考え直しますし、技術的な理由から別の方法を提案することもあります。
それでも、まず本人が何を感じて、どう弾きたいのかを知ることは大切にしたいと思っています。
僕が、
「僕はこう思うけれど、どうだろう」
と話して、生徒の考えも聞いてみる。
意見が違えば、実際に両方弾いてみればいい。
そうやって楽譜を見て、弾いて、聴いて、また考える。
そんなやりとりをする時間が少しずつ増えていけばいいと思っています。
そして音楽は、一度出した答えがずっと変わらないものでもありません。
以前のレッスンで僕が「ここはこう弾こう」と言ったのに、しばらく経ってから全く違うことを言うこともあります。時には180度違うことを言うことさえあります。
「先生、前と言っていることが違う」と言われれば、その通りです。
演奏している本人も変わります。
曲への理解も深くなります。
身体も、耳も変わっていきます。
そして、教えている僕自身も常に変わっています。
以前は気づかなかったことに気づいたり、以前は良いと思っていたものが、今は少し違って聞こえたりする。
演奏が変わっていくのだから、それについて考えることや話すことが変わっていくのも、僕は自然なことだと思っています。
だから、先生が言ったことを覚えて、その通りに弾くことだけがレッスンではなく、
「前はこう考えていたけれど、今はこう思う」
「先生はそう言うけれど、自分はこっちの方が好き」
「楽譜を見ると、こういう弾き方もできるんじゃないか」
いつかそんなことを、生徒さんの方から積極的に言ってくれるようになったら面白い。
小さい頃は一緒に楽譜を読んで、少しずつ自分から読もうとするようになり、やがて自分なりの考えを持つようになる。
その考えが僕と違っていたら、また一緒に楽譜を見ればいい。
そんなふうに音楽について生徒さんとあれこれ話がたくさんの時間できるようになったら、更に楽しいだろうな~と。最近はそんなことを思いながらレッスンをしています。